宅地建物取引士(宅建士)とは,宅地建物取引業法に基づいた国家資格です.不動産の売買や交換,貸借の取引において,購入者等の利益の保護および円滑な流通に資するよう,契約時の重要事項の説明などを行う,不動産取引のエキスパートです.

資格の取得には宅地建物取引士資格試験(宅建試験)への合格が必要です.合格後,所定の登録要件を満たしている者は,登録手続きを行い,宅建士証の交付を受けることで宅地建物取引士になります.

宅建業法により,不動産の取引時における「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名押印」「契約書への記名押印」は宅建士のみが行うことのできる専管業務と定められています.また,宅建業者には常に一定数以上の専任の宅建士の設置が義務付けられており,不動産関係の資格の中でも認知度が高く,大きな需要のある資格です.


合格者データ(令和2年度)

受験者数

204,250

合格者数

34,338

合格率

16.8%

資格のあらまし

資格の名称

資格名
宅地建物取引士
よみ
たくちたてものとりひきし
資格英名
Real estate transaction agent

上記以外にも,宅建士,宅地建物取引主任者(1965-2015)と称されることがあります.

資格の種別

宅地建物取引士は,宅地建物取引業法に定める国家資格で,国土交通省が主管しています.資格制度は1958年に宅地建物取引員として始まり,現在に至っています.

資格種別
国家資格
根拠法令
宅地建物取引法
試験実施機関
一般財団法人 不動産適正取引推進機構
主管官庁
国土交通省
制度開始年
1958(昭和33)年

試験の実施団体である不動産適正取引推進機構は,不動産取引に関する紛争の防止や処理を図る財団法人です.宅地建物取引業法に基づいて,国交省大臣から試験実施機関としての指定を受け,各都道府県知事の委任のもとに宅地建物取引士資格試験を実施しています.

資格の認定と更新

宅建試験に合格後,都道府県知事への登録手続きを経て,知事から宅地建物取引士証(宅建士証)の交付を受けることにより,宅地建物取引士となります.

認定方式
試験および実務経験
登録機関
都道府県知事
登録要件

宅建試験に合格し,かつ以下に示す実務経験のいずれかを有する者.

  • 宅地建物取引業で2年以上の実務経験
  • 登録実務講習の修了
有効期間
あり(5年間)
更新方法
宅建士証は5年ごとに法定講習を受講して更新する

制度上の講習

宅建業法により,宅建士あるいは宅建士になろうとする者を対象とした法定の講習制度が設けられています.

試験科目の免除
資格の登録
更新・継続

呼称・称号

宅建士試験に合格し,各都道府県の宅地建物取引士資格登録簿に登録の上,宅地建物取引士証の交付を受けた者のことを宅地建物取引士といいます.試験合格の効力は宅建士証の交付手続きや資格登録をせずとも期限なく有効ですが,宅建試験に合格しただけの段階にある場合には,宅建士を称することはできません. なお,宅建士は,取引士証の交付を受けた都道府県だけではなく,日本全国どこででも,その事務を行うことができます.

宅地建物取引士
宅建士として登録されており,現に有効な宅建士証の交付を受けている者のこと.
宅建士登録者
都道府県の資格登録簿へ登録されている者のこと.
宅建士試験合格者
宅建試験に合格した者のこと.

資格の位置づけ

法令上の地位

宅地建物取引士は宅建業法に基づく資格であり,法により一定の業務独占や設置義務を認めらています.また,有資格者は不動産特定共同事業における人的要件のひとつとなっています.

専管業務

宅建士の専管業務

  • 重要事項の説明(宅建業法35条)
  • 重要事項説明書への記名押印(宅建業法35条)
  • 契約成立時に交付すべき書面への記名押印(宅建業法37条)
設置義務

宅建士の設置義務

  • 宅地建物取引業者は,その事務所または案内所等の場所ごとに一定数以上の成年である専任の宅地建物取引士を設置しなければならない(宅建業法31条の3第1項)
人的要件

不動産特定共同事業の業務管理者

不動産特定共同事業の許可を受ける際には,一定の資格を持った業務管理者を設置しなければならない(不特法17条).宅地建物取引士資格登録者であり,かつ以下のいずれかの認定を受けている者は,登録証明事業による証明を受けた者に該当し,業務管理者になることができる(不特法施行規則21条の3).

  • 宅建業法:宅地建物取引業法
  • 不特法:不動産特定共同事業法

宅建従業者の研修

宅建業法により,宅建業の業界団体には,法により宅建士等の知識向上のための体系的な研修実施の努力義務が課せられています.このため,宅建業界全体で様々なレベルでの研修体制が整備されています.

初任者向け

宅建業初任者向けに,各業界団体では以下のような資格・研修の制度を用意してる.

取得の推進
業界団体の協議会により,業界全体での宅建士資格の取得の推進を目指した体系的な研修制度として,宅建アソシエイト資格制度が設けられている.

ステップアップ

不動産適正取引推進センターでは,宅建士資格の取得後の継続的な資質の向上を目的に,宅建マイスター不動産流通実務検定などの資格・検定を実施しています.

試験の概要

試験名称
宅地建物取引士資格試験(宅建試験)
受験資格

なし

誰でも受験することができる

試験実施団体
一般財団法人 不動産適正取引推進機構
受験料
7,000円(非課税,令和2年度)

受験スケジュール

試験日

年1回

10月の第3日曜日(例年)

試験会場

全国すべての都道府県

47都道府県261会場(令和2年度10月分)

試験公告
6月の第1金曜日(官報,ホームページ)
出願期間

【ネット】7月1日〜15日(例年)

【郵送】7月1日〜31日(例年)

受験票発送
9月下旬(例年)
合格発表
11月最終水曜日または12月第1水曜日(例年)

試験の内容

試験方式
マークシート
出題形式
四肢択一, 全50問,2時間
試験範囲
  1. 土地の形質,地積,地目及び種別並びに建物の形質,構造及び種別に関すること.
  2. 土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること.
  3. 土地及び建物についての法令上の制限に関すること.
  4. 宅地及び建物についての税に関する法令に関すること.
  5. 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること.
  6. 宅地及び建物の価格の評定に関すること.
  7. 宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること.
法令基準日
試験年の4月1日
合格基準
おおむね満点の70%以上の得点で合格
免除科目等

あり

宅建登録講習の修了者は,出願時に申請することによって一部問題が免除される,例年,本試験で課される全50問のうち5問が免除されて,一律5点が加点される.

お問い合わせ

試験実施機関

(一財)不動産適正取引推進機構 試験部

https://www.retio.or.jp/exam/


所轄官庁

国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000246.html

制度の沿革

宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)が制定

宅地建物取引員試験として第1回の試験を実施

宅地建物取引主任者試験へ名称を変更

問題数が変更(30問→40問)

宅建業法の改正・公布(取引主任者証制度の新設など)

問題数が変更(40問→50問)

財団法人不動産適正取引推進機構(2013年に一般財団法人へ移行)が設立

不動産適正取引推進機構が宅地建物取引主任者資格試験の指定試験機関となる

宅建業法の改正・公布(指定講習制度の導入)

指定講習(現・宅建登録講習)の修了者に本試験の一部を免除する制度が開始

受験資格(学歴・実務経験)の制限を撤廃

免除制度の変更(5問免除の対象を登録講習機関が行う講習へ拡大)

宅地建物取引士試験へ名称を変更

資格データ

有資格者の数

不動産適正取引推進機構の発表によると,全国の宅地建物取引士の登録者数(令和2年3月末)は1,076,177人です,そのうち宅地建物取引士証の交付を受けている者は,524,716人です.

受験データ

試験科目別の出題状況

これまでの宅建試験の過去問に基づいて作成した,例年の試験科目別の出題状況を表に示します.主幹科目である④宅建業法と,取引実務に関する⑤免除科目とで,全体の半数(25問)を占めています.科目別の配当数はここ10年以上変化がないため,今後もこの傾向が継続するものと予想されます.

凡例科目配分
権利関係14問
法令上の制限8問
税・価格3問
宅建業法20問
免除科目5問
 合計50問

近年の本試験の過去問より作成

受験者数・合格者数・合格率の推移

過去5年間に実施された宅建試験の受験者数,合格者数および合格率の推移を図表に示します.宅建試験は,例年20万人近くの受験者を集めており,合格率は15%〜17%前後で安定して推移しています.毎年の合格者数は3万人超で,今後の合格率・合格者数も同程度の水準になるものと予想されます.


試験回受験者数合格者数合格率
2020年度204,25034,33816.8
2019年度220,79737,48117.0
2018年度213,99333,36015.6
2017年度209,35432,64415.6
2016年度198,46330,58915.4

(一財)不動産適正取引推進機構の発表に基づき作成

2020年度は10月試験と12月試験の合計値

なお,申込者数が過去最高だった年は,宅地建物取引主任者であった時代の1990(平成2)年です.同年の申込者数は422,904人,受験者数は342,111人でした.

免除受験者の数

不動産適正取引推進機構の発表によると,2020年度の宅建試験では,全申込者の約20%が宅建登録講習の修了による免除申込者です.

合格者の男女比

宅建試験合格者の性別内訳(令和2年度の場合)を図表に示します.合格者の男女別の比率は,男性が64.2%(22,051人),女性が35.8%(12,287人)でした.

凡例項目内訳
男性22,051人
女性12,287人

(一財)不動産適正取引推進機構の発表に基づき作成

合格者の年齢

令和2年度の宅建試験の合格者の平均年齢は,34.7歳(男性35.4歳,女性33.4歳)です.例年,幅広い層から合格者があり,2020年の最高齢の合格者は89歳,最年少は14歳で,広く認知されている試験と言えます.

合格点の推移

過去5年間に実施された宅建試験の合格基準点(合格に必要な最低点)の推移を図示します.最近5年間(平成27年〜令和元年)の平均は34.6点で,合格には満点のおおむね70〜75%の得点が求められていることがわかります.平成22年度以降のデータを見ると,最大値は令和2年度の38点,最小値は平成27年度の31点でした.

(一財)不動産適正取引推進機構の発表に基づき作成

合格者の地域別内訳

宅建試験(令和元年度)合格者の地域別内訳を図表に示します.図表中の地域ブロックは,受験地であった47都道府県を全国6地域へ割り振り,集計したものです.東京を含む②関東・甲信越のブロックの合格者が19,090人と,同年の全国の合格者37,481人のうち50.9%を占めています.

凡例地域割合
北海道・東北6.1%
関東50.9%
中部11.3%
近畿17.2%
中国・四国5.5%
九州・沖縄8.9%
 合計100.0%
(37,481人)

各ブロックは以下の各都道府県を含む:

【北海道・東北】北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 【関東】茨城県 栃木県 群馬県 新潟県 山梨県 長野県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 【中部】富山県 石川県 福井県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 【近畿】滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 【中国・四国】鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 【九州・沖縄】福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

(一財)不動産適正取引推進機構の発表に基づき作成

合格者の職業別内訳

宅建試験の合格者の職業別内訳(令和元年度)を図に示します.資格の性質上,不動産関係の就業者が36.8%を占めており,不動産と職域が隣接している金融関係(10.1%),建設関係(9.9%)の順に続いています.不動産業界以外からの合格者も半数近くあり,資格の有用性が広く評価されている試験であると言えます.

凡例業種割合
不動産関係36.8%
建設関係9.9%
金融関係10.1%
他業種21.3%
学生11.4%
主婦3.9%
その他6.6%

(一財)不動産適正取引推進機構の発表に基づき作成